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山本英夫×池上遼一 衝撃内幕対談!!

『アダムとイブ』への印象はネガティブだった!?

池上: 「山本さんが池上さんと透明人間やりたがってますよ」って聞いたときに、「ええっ?!」と思ったんですよ。僕の古い頭の中で透明人間には、ハリウッド映画のシルクハットがフワッと浮いたりとかタバコが浮いてるような単純なイメージしかなかったから。
山本: なるほど、そうだったんですね。
池上: ちょっと良いイメージが湧かなかったんです。でも原作を読ませてもらって考えが変わりました。この目に見えぬ存在による暴力と、元々暴力が職業であるヤクザが戦うっていうことは、本当に面白いなと思った。透明人間に対する新しい視点だと思いましたね。
山本: ありがとうございます!
池上: 最初に山本さんと打ち合わせした時に「僕は池上さんの描くいい男≠犯したいんです」って山本さん言ってましたよね?
山本: 言いました、確かに(笑)池上さんが描くキャラが、決してしなさそうな動きや表情をあえて追求していく…それが僕の中でのテーマ≠フ一つだったんです。
池上: 僕は山本さんの描く世界観に兼ねてから興味がありましたからね。でも、犯されっぱなしは嫌だなと(笑)

山本: (苦笑)
池上: だから第1話でいえばスメルが鼻で酒を飲むシーン…ここでは、どれだけ自分の絵のスタイルを崩さないでいけるか…ということに腐心しました。酒を飲んだ後にスメルがハンカチで拭うこのシーン…
山本: あ、ここは僕の原作にはない池上さんのオリジナルですよね?
池上: そう。飲んだ直後の「イカれた顔」のままで終わりたくなかった。だから一旦ハンカチで拭いて、一度まともな顔に戻らせたいなっていうのがあったんです。これが僕なりの山本さんへの抵抗(笑)
山本: なるほど(苦笑)
池上: そのほうが、このスメルという男の狂気を感じるなあっていう考えもあったしね。


▲原作には無かった酒を飲んだ直後
 にハンカチで拭うシーン

漫画家同士が組むことへの「不安」

池上: 山本さんのような「漫画家」と組むということにも不安もあったんですよ。同じ漫画として、僕の絵に不満も出てくるんじゃないか…って。
山本: そうだったんですか?
池上: でも山本さんが気に入ってくれたみたいだからひと安心(笑)
山本: 特に男キャラの色気が素晴らしいです!!
池上: 僕は女も好きだけど、とにかく男を描くのも好きなんですよ。だからスメルというキャラの男独特のエロティシズムっていうか、そういうのを出そうと強く意識しました。
山本: なんか常識からズレた主張の中にも、哲学が一本筋が通ってるみたいな。スメルには、そんな印象が僕にはあったんですよね。もともとはスメルは僕が考えたキャラだけど、今や彼に対する愛は池上さんの方が強い気がします。絵に現れてる(笑)
池上: 彼を描くときは、やはりテンションは上がりますね。知性と狂気が同居している美麗なヤクザ、というのが良いと思うんです。一見真面目そうでも、意外と潜在的に何か持っているものがあると、読者はそういうキャラに魅かれるものだろうから男前にしないとダメだな…と思ったんです。
山本: 自分で原作書いておいて言うのもなんですが、そんなスメルがホステスの髪を燃やして臭いを嗅ぐシーンは本当に衝撃でした。
池上: ただでさえエゲつないことしてるからね。あれでスメルが不細工だったら僕も嫌になっちゃよ(笑)
山本: でもそうやって池上先生によってビジュアル化されて動くスメルを見て、僕の中でスメルというキャラが出来上がっていくんです。池上さんの絵無しでは、今のスメルというキャラは存在していない。
池上: 僕はとにかく読者が普遍的に好むような顔のイケメンを描こうとしてるから。だから、そいつが残酷なことをやろうとするとき、ふっと目に、ある種の悲しみがあれば、キャラとして、もうそれで許されちゃうっていうのがあると思うんです。そこら辺は自分の中で意識的に描いてますね。
山本: そういえば前に僕がスメルの名前を「田中」に変えようとしたら、池上さんが大反対されましたね。
池上: もう絶対、田中じゃだめですよ。
山本: あの時からスメルは池上さんに持っていかれたなと(笑)

池上遼一が追求する男のエロス

池上: 話の内容とかテーマっていうのは山本さんの中であるんだろうけども、僕は絵的には男のエロス≠描きたいんです。
山本: 五感のヤクザたちそれぞれに独特の雰囲気出てますよね。僕は一発目に散った味覚のヤクザが印象に残ってるんですよ。
池上: あの男ね。
山本: なんか妙に雰囲気あって…ちょっと、ただならないキャラというか。
池上: 首が割と細めでね。それで頬骨が出ててゲッソリしてるみたいな。酷薄(こくはく)な感じを出すために。で、唇がいつも濡れてる。
山本: そうそう濡れてますね。
池上: 普段から赤〜い唇の奴っているじゃないですか。
山本: パンを食べるときベロ出してましたもんね、これ。僕は原作で出してないですよ。はむってベロ出してパンを食べるとこがすげー印象残ってるんです。
池上: ひとりひとり顔は違うし個性もあるけど、みんな男としてそれなりにエロチックでしょ。役者でもいるじゃないですか。ちょっとした役どころしか貰えなくても、いかに見てる人に強い印象を持ってもらうかに長けてる人が。
山本: ですよね。味覚のヤクザは特に活躍はできなかったけど、確かに短い時間に鮮烈な印象を与えて散りましたね。
池上: あの血塗りのパンを食べるアイデアは、山本さんならでは(笑)他にも最初に死んだ桜井さんは、今でも「あの人は何に特化してたんですか?」ってよく聞かれますよ。
山本: 桜井さんの風貌は最高ですよ。あの顔のアップなんかどこかの学校の真面目な講師みたいじゃないですか。
池上: ヘアスタイルもヤクザっぽくないよね。
山本: 僕は思いました、一番良いのが最初に逝っちゃったなと(笑)
池上: あれもすごかったね、視覚のヤクザ。
山本: はいはい、死にざまが。
池上: 見開きで、突然ドカーンと顔面を蹴られる…
山本: 足の形がくっきりと。
池上: うん。顔が歪んじゃうみたいな。あれは衝撃的でしたよね。
山本: すごいインパクトでしたね。
池上: もともと山本さんからは、顔面を蹴られた衝撃で後頭部が「突き出る」ぐらいの迫力でやって欲しいってオーダーがあったんだよね。
山本: ああ、出てましたね! 後頭部! あれ、ネットとかでも話題になってましたよ。
池上: みたいだね。あと、その直前に視覚ヤクザの髪がフワッとなるコマ…
山本: あ、このタメですね。
池上: こういうすごく静かなシーンを置いて、次のシーンでボゴーッと来るのが、インパクトを増大させるんですよね。
山本: ですよね。いや、俺も好きですよ、ここのシーン。静かーなとこに、急に。
池上: うん。ドカッと急に来る。
山本: ここの足の形って分かりやすく絵になってますけど、これを実際に自分が 描くとなるとなかなか難しいですよ。どこをどう曲げて、どう(しわ)をつくればいいのかって相当悩むでしょうね。
池上: ここは描いてて結構楽しかったですね。


五感のヤクザのトップバッターだ
 った味覚のヤクザ。


その風貌が意外な反響を産んだ
 櫻井さん


暴力の前の静けさを演出


ディティールに拘った足の形


話題となった「突き出た後頭部」

両者が互いに抱いていた「イメージ」

池上: やはり山本さんは『ホムンクルス』の印象が強いですね。極めて特異なアイデアや設定にも関わらず、妙にリアリティがあった。そこが凄いと思った。それと山本さんの作品には、ある種の「男臭さ」があると思うんですよね。『アダムとイブ』もそうだけども、あんまり女に媚びないところがいいですね。
山本: うーん。多分あんまし、女性っていうものを分かってないんでしょうね(笑)
池上: いや、そんなことはないでしょう。例えばスメルがホステスに対してキツいことをやっても、何故かスメルは魅力的に見えますからね。
山本: スメルがホステスに対して見せしめのような行為をしたのは、彼がちょっと何するか分かんなくて、そして何が起こるか分かんないというような雰囲気が欲しかったんです。一般的な仁義とか、そういった読者の想像の枠を少しでも越えたかったというか…
池上: うん。そこら辺が上手く出ていると思いますね、山本さんの世界ですね。
山本: ただ、昔からこういう描き方をしてたら、当時の担当からは「山本さんは女性を人として扱ってない」って非難されましたね(笑)
池上: まあ、女の人もね、みんなマゾとサドの両面持ってるから。スメルなんかは両面を刺激できるキャラじゃないかと思いますね。
山本: 僕にとって池上さんの印象深い作品は、数多の名作があると思うんですが、その中でも『今日子』(原作/家田荘子)ですね。特に男が自分の恋人を外人に犯されているのをぼーっと見てるシーンがあったんですけど、その勃起してるモノ≠ェ、左右どっちかにぐいっ≠ニねじ曲がってるんですよね。
池上: あったね、そのシーン。
山本: 何かズボン越しに、もの凄い野太いイモムシが這ってるみたいな。激しい感情がズボン越しに伝わってくる絵でしたね。


先が読めないスメルの行動


山本英夫が衝撃を受けた『今日子』(作・家田荘子 画・池上遼一)のワンシーン

山本英夫特有の「ユーモア」表現

池上: 山本さんの『殺し屋1』とか特にそうなんだけど、残虐性の中にもどこかにユーモアがあるんだよね。
山本: なるほど。
池上: それが山本さんの最大の魅力だと思うんです。深刻なテーマ、状況でありながら、どこか茶化してるというか…例で言うと、僕の師匠である故・水木しげる先生なんかがそうでしたね。『悪魔くん』にしろ『ゲゲゲの鬼太郎』にしろ、どこか茶化してるんですよね。その辺が漫画としての魅力だと思うんです。
山本: 僕なんかが水木先生と並べられるのはおこがましいです…
池上: その一つが「擬音」。実はこういう表現は僕はもう使わないでおこうと思っていたんです。古風な漫画表現なんですよ。例えば、「きょろきょろ」とか。でも山本さんは、ああいう擬音を自然に入れてるじゃないですか。
山本: ええ。僕、バンバン入れますね。じゃあ、池上さんがこんだけ擬音を使ったのは久しぶりなんですかね?
池上: そう。擬音を入れることによって、どこか、残酷なものをオブラートに包めるのかなっていう感じがありますね、僕の中で。
山本: うーん…じゃあ、そこの部分でも僕は池上先生を犯してた≠けですね。
池上: そうですね、そこは素直に犯された(笑)

山本: なるほど。確かに桜井さんの目が潰されるシーンも入れてますね。「ペコ」って。
池上: 昔、僕が読んでいた『赤胴鈴之助』(著/福井英一・武井つなよし)とかね。代表的なのは刀を掴むときの「ムンズ」とかね。
山本: ああ、はいはい。


残虐性を緩和させる擬音「ペコ」

池上: 現実では絶対にそういう音しないんだけどね(笑)あと、水木しげる先生の「シーン」とかね。静かーな、静寂の音を「シ―ン」てね。そういう擬音は漫画の表現方法が高度化して、もうそういうのを入れると古いんじゃないかなって言われた時期があった。でも山本さんはこういった擬音を多用することで残酷性を緩和させてるみたいなとこがありますね。
山本: 漫画の文化って、かみ砕いていくと字と絵じゃないですか。で、絵が文字を助けていて、文字が絵を助けているっていうのが一番、僕はバランスがいいと思ってるんですよ。
池上: うんうん。
山本: だから、その文字がどんなにドン臭くても、絵を読者に分かりやすくするために、どんどん入れるっていうことを、僕はとっても意識してるんです。ここは雰囲気で見せるべきだっていうとこも、なるべく僕は「字」を入れちゃうんです。パッ、パッて見る人に分かりやすいように。
池上: その感じは分かりますよ。特に今回の透明人間というテーマのせいもあるけども、そういうふうに細かく見せてあげないと読者が分からないっていうのがありますよね。
池上: ちなみに桜井さんが目を突かれるシーンだけど、山本さんは最初から「これは見開きで」って仰ってましたよね。
山本: そうなんですよ。透明人間の話を描くときに、これも描きたかった一つなんですよ。瞳がペコって、なる。
池上: 実は最初シナリオを読んだ時、僕は今いちイメージが湧いてなかった。でも山本さんの絵コンテで「ああ、なるほどこうなのか」っていうのが分かった。まるでスローモーションで見てるみたいな感じだったね。
山本: これ…描くのが難しいですよね。
池上: アシスタントさんにも、かなり苦労してもらいましたよ(笑)
山本: あとはこの、ヤクザ達をベタ使ってカッコ良くしているところ、憎いじゃないですか。ちょっとシルエットを濃くしちゃうっていう。僕もベタでシルエットを出すの好きだけど、こんだけうまくは描けないですね。
池上: 僕はアメコミがずっと好きで、今でもアメコミの新しい作品を買ってるんです。向こうの漫画を読んでると、もう全部がコントラストがはっきりした絵なんです、多いんですよね。でも、そういうのをそのまま使うんじゃなくて、どっか効果的に使ってやれば、演出的にいいものになるんじゃないですかね。日本の漫画は。
山本: 多分こういうベタかまして、斜線とか目の白目に入れるって、漫画界では池上先生が初めてなんじゃないですかね…白目に影をかぶせるって、昔の人は絶対にやんなかったじゃないですか。
池上: どうなんですかね? でも、最近は結構多いですよね。

池上遼一が秘かに込めたフェチズム

山本: 他に池上さんが特別こだわった絵はありますか?
池上: そうですね…例えば第6話の口を開けて死んでいるホステスですが…
山本: あ! この絵、何か妙にエロかったです。

池上: そう。この絵はデビッド・リンチ監督の映画『ツインピークス』での女性の遺体を検視するシーンを意識してるんです。カメラが遺体の開いている口にズームしていくんだけど、それがとてもエロくて。
山本: 力を込めたシーンだったんですね。


池上遼一の口と唇へのフェチズムが込められた絵

池上: 唇の質感とかもこだわりました。僕は唇と口のフェチなんですよ。
山本: そうだったんですか!?
池上: そしてやっぱり唇をいかすためには、少しドレスから股間(こかん)を見せなきゃダメじゃないですか。
山本: え?
池上: やっぱり連想させなくちゃダメですよ。唇フェチってのは、やっぱり股間と連結してるわけだから。
山本: なるほど「下の唇」とですね…深い。そっか〜暗示的なものだったんですね。
池上: 実はこのフェチズムに最初に目覚めたきっかけはトム・クルーズなんですよ。
山本: トム・クルーズ? 男に?
池上: 映画『レインマン』のトム・クルーズの口元がすっごいエロティックだったんです。いい唇してるんですよ。
山本: そこから池上さんの唇と口へのこだわりが始まったんですね。
池上: 先日も電車に乗っていたら、仕事が出来そうなOLさんが無防備に口を豪快に開けてうたた寝してたんで、思わず見入ってしまいました。
山本: 池上先生、人間観察もほどほどにしてください(笑)

「実験」として始まった『アダムとイブ』!?

池上: 山本さんは最初会ったとき、「これは実験マンガだ」って言ってましたよね。
山本: あれ、そうでしたっけ?
池上: 言ってたじゃないの!「実験的にやりましょう。人気出るかどうかわかんないですけど」って。
山本: そう言われると言ったような気も…俺もその時その時の思いつきで言っちゃうんで…すみません(笑)
池上: こっちとしては、山本さんと組むからには、やはり人気につながるものをやりたいなとは思ってましたね。
山本: 本当に恐縮です…編集部には悪いけど、僕はもう人気なんか最初から考えてなかったです(笑)自分の頭にあったのは「池上遼一を動かすという歴史が欲しい」っていうことで、それが僕の最大のモチベーションであり作家としての幸せだと思ってましたから。
池上: わかりました、これからも存分に動かしてください(笑)

PROFILE

  • 山本英夫
    1989年にヤングサンデーにて『SHEEP』(原作・鷹匠政彦)でデビュー。代表作『のぞき屋』『殺し屋1』『ホムンクルス』
    イラストby池上遼一

  • 池上遼一
    1961年に貸本漫画「魔剣小太刀」(日の丸文庫)でデビュー。代表作『男組』『クライングフリーマン』『サンクチュアリ』『HEAT-灼熱-』