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第5回 今日も食べては書いてます! …Vol.2 東北食い倒れの旅《前編》
今号('08年6号)より、『新・味いちもんめ』改め『味いちもんめ〜独立編〜』となりました。今後ともご声援よろしくお願いいたします! というわけで、福田幸江氏の“食い倒れコラム”(!?)第2回は、みちのく旅情編です!
文/福田幸江(『新・味いちもんめ』シナリオ執筆者)
写真を整理していたら、懐かしい旅行写真を発見! 今回は、私が旅した東北のお話です。
 ここ十数年「東北」に夢中になっている私。昨年9月も3年ぶりに、山形、秋田、青森、岩手と3泊4日弾丸ツアーを決行したのでありました。その旅は「各地の名物を食べ倒す」というもの。姉と弟、弟の彼女と共に、深夜に東京を出発。徹夜で車を運転しながら、まずは第一目的地の山形は銀山温泉へ…。
どこか懐かしい雨の銀山温泉街。
 銀山温泉は大正時代に建てられた木造3階建ての旅館が残るノスタルジックな温泉で、NHKの連続ドラマ「おしん」で一躍有名になった場所です。ここは今回で3度目なのですが、前回、前々回に食べ損ねたお豆腐が目的でした。
商店には見えない民家がそのお豆腐屋さん。恐る恐る玄関を開け、お店の人を呼びます。優しそうなおばさんが顔を出し「はいはい」とお豆腐を持ってきてくれました。おばさんはニッコリと「食べ終わったら、容器は玄関に置いてくれればいいですよ。外にゴミ箱がないからね」。東北人らしい温かみのある言葉で、ちょっとほっこり…。
これがお豆腐屋さんですよ〜!
その名も立ち食い豆腐。150円也。
まさしく、まっかっか〜! 花笠なんばん。
さて、そのお豆腐ですが、木綿風で半丁ほどがひと口大に切り分けられていて、出汁醤油が少々かけらていました。口に入れるとふんわり温かく、その形とは違ってふわふわの口当たり。さら甘にみもあって、昔食べていたようなお豆腐でした。完食後、大満足の私は温泉にも入らず、その夜の宿泊先、秋田へと先を急ぎました。
 その道すがら、東京では見たことのないものを発見! 当然のように車を止め、野菜の無人販売所へと向かいました。それは軒先に吊るされた長さ15〜20センチほどの乾燥した唐辛子。色が鮮やかで、張り紙の説明を読むと「花笠なんばん」とあります。魔よけやお部屋のインテリアになるそうで、もちろん食用にもできるとか。
 珍しいものは取りあえず食べてみる主義の私は、さぞ辛かろうと1把買い求め、ちぎって口へ。ムム…あまり辛くない!? でも、唐辛子特有の鮮烈な香りが鼻へ抜けていきます。「帰ったらどんな料理にしようかね」と姉と話をしつつ、再び秋田へと車を発進させたのでありました。
秋田での「食い倒れ」は、倉田よしみ先生のお知り合いが営まれている「酒楽亭 ももん」さんです。ここがまたすごい所で、ご主人自ら船を出して魚を釣って料理をし、県内の知人から野菜を仕入れつつ、季節になれば山にも入るというお方。さらにいくつもの蔵元さんとお付き合いがあるため、珍しい日本酒がたくさん。そして極めつけは、素材や料理に合う醤油まで、特別注文して作らせているほどで、食への気遣いやこだわりは半端じゃないのです。今回もすごかった! カナガシラ、鯛、カワハギ、ウニ(男鹿産)、松茸…、地物のオンパレードでした。ご主人は、元々は東京のご出身。十数年前、この土地柄、人柄に魅せられて移住されたそう。そんなご主人のもてなし方は、全力投球! 素材、料理はもちろん、お酒の話から料理のうんちくまで、話題も豊富で「料理は人柄」という言葉を地でいく方です。もう飲めない、食べられない、という程に「ももん」の夜を満喫した私たちは、秋田の繁華街、川端へと場所を移し、さらに秋田を満喫したのでした。やっぱり東北は最高です。
カナガシラの清まし汁物仕立て。激ウマ。
焼松茸た〜っぷりの前菜。美しい〜♪
鯛2種に、アツアツのタレをかけて! 
男鹿のウニ。秋田名物ジュンサイと共に。
肝デカ、脂ノリノリのカワハギ刺。
松茸ゴロゴロご飯! ありがとう!
 なぜ私がここまで東北に夢中かといえば、話は10年ほど前にさかのぼります。「東北って、あまり行ったことがないね〜」という話から、叔母と2人で東北6県を巡るドライブ旅行に出かけたのです。当時カーナビなど持っていなかったので、ガソリンスタンドで配られている国道と県道が記されている日本地図だけが頼り。   今から考えると無謀ですよね〜。地図くらい買えよ! ってな話です。さらに宿泊先も現地調達。そんな旅行はペースもゆっくりで、東京に帰るまでに2週間もかかってしまいました。その旅行も終盤に差し掛かった頃のことです。すでに東北ツアーは「買出しツアー」に様変わりしていて、車は各地の名産品や農作物で宝船状態。もう、お土産は積めないかも、というのに、私は秋田のとある農産物センターに立ち寄りました。秋田といえば米どころ。美味しい「秋田こまち」があったら…なんて、欲の皮がパンパンになっていました。中に入ると地物を使った料理が食べられるコーナーがあり、とりあえず試食をしてからお米を買おうと思ったのです。そして、おにぎり1個を注文。応対してくれたおばあさんは、「2人なのに1個でいいのかい?」と不思議そうな顔をしつつジャーを開け、おにぎりを握り始めました。見てビックリ! おばあさんの握るおにぎりの大きいこと、大きいこと! ソフトボール位の大きさです。
そして私は120円ほど払っておにぎりを受け取りました。私は恐縮しておばあさんに「こんな大きくていいんですか?」とひと言。おばあさんは「2人で1個だからな」ハッとして叔母と顔を見合わせ、「あ、ここのお米がおいしいかどうか試そうと…、美味しかったら買っていこうと思ったもので…」と説明しました。
 おばあさんは、また不思議そうな顔をして「そんなことしてから買うこともあるもんだね〜、あんたたちお金持ってないのかと思ったよ」と。私は急に自分が恥ずかしくなりました。「おいしいかどうか試そう…」なんて言う人は、今までいなかったのでしょう。完全なる私の尊大なおごりでした。失礼を詫びたのは言うまでもありません。この地域は水がよく、昔から県内有数のおいしいお米がとれること。限られたこの地区のお米だけを集めて出荷しており、他の地区でとれたお米は一切ブレンドしていないこと。おばあさん自身も子供の頃から減農薬で稲作をし、今まで食べ続けてきたこと…。おばあさんはいろいろ話てくれました。食品の流通を表す言葉に、地産地消というのがあります。その土地で生産されたものをその土地で消費する、といった意味です。それと似た言葉で、四方八里といのがあります。四方24km以内で作られたものを食べていると、病気にならないという食にまつわる言い伝えです。 この言葉が示す通り、昔は狭い限られた地域内で食品を売り買いしていました。当然売り手は消費者と顔を合わせなければなりませんし、万が一ヘタな物を売ってしまったら、その地域では商売が立ち行かなくなるしょう。
 私はその言葉を知っていながら、自信ある生産者を前にして値踏みするようなことをしてしまったのです。知らず知らず、消費者なのだから、という上から目線になっていたんですね。こんな反省もありつつ、おばあさんが握ってくれた巨大おにぎりがおいしくて、おばあさんの温かい人情がうれしくて、東北Loveになってしまったわけです。
 最近では、食の安全に不安がつきまといます。面倒でもなるべく手作りを心がけ、少しでも安全なものをと、素材は売り手の顔や生産者の顔が見えるものを買い求めようと思っています。ただ、料理は時間がかかり、食費は意外と家計を圧迫するもの。安全だからといって、毎日高い食材を買うわけにもいきません。
 ああ、頭が痛い…と言いつつも、食いしん坊の欲求は止められず、「東北食い倒れの旅」は次号へと続く…。